くぼっちは咲下を抱きしめたまま、咲下の背中をポンポンと叩く。
「また会えてうれしいよぉ~咲下~」
「……いつまで抱きついてんだよ?くぼっち」
俺の言葉に咲下の体を離したくぼっちは、咲下にニッコリと微笑んだあとで、俺のほうを見た。
呆れている俺の顔を見て満面の笑みをこぼすくぼっちは、勢いよく俺に抱きついてくる。
「琉生きゅーん!もぉー会いたくて会いたくて、震え……」
「はいはい、それはどーもねー」
くぼっちの言葉を途中で遮って言うと、くぼっちは俺の体から離れて、不満そうに口を尖らせた。
「おい、ちょっと待て。咲下への愛を俺にも分けてくれや」
「ハハッ。無理」
「ねぇ、咲下。聞いて?橘って咲下にはちょー優しいくせに、俺にはちょー冷たいの。橘が咲下のこと、どんだけ好きかっていうとね……」
咲下の肩を抱きながら小声で話すくぼっちのケツを、俺は思い切り蹴り飛ばす。
「イテェッ!……咲下ぁ~助けてぇ」
咲下の後ろに慌てて隠れるくぼっち。
「大げさかよ」
この感じ、なんだか懐かしい。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)