「くぼっち……気づいてたんだな」
「まぁねー。心配すんな、誰にも言わないから」
走りながら俺の背中をポンと叩いたくぼっちは、ニコッと笑った。
「橘って、誰に対しても同じ態度だけどさ。なんか咲下にだけ話し方とか優しく見える」
「うそ!普通にしてるつもりなんだけど」
「まぁ他のやつらは気づいてないと思うよ?たぶん咲下本人も」
なんか急に顔が熱くなってきた。
「うぇいうぇーい!照れちゃってさぁ~。橘も可愛いとこあるじゃん」
「からかうなよっ」
俺はくぼっちの脇腹に肘鉄をくらわす。
「イタッ!おまえっ、走ってる時にそれはキツイって」
「あ、わりぃーわざと」
その時、遠くの方から先生の叫ぶ声が聞こえた。
「おまえらー!ふざけてないでちゃんと走れー!」
俺とくぼっちは顔を見合わせて笑った。
「なぁ、橘」
「ん?」
「咲下と付き合ってるわけじゃないんだよな?」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)