逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「声が出なくなるなんて……凜ちゃん、よっぽどつらいことがあったんだな」



医者が言うには、精神的な緊張状態が続いたことや、



何かショッキングな出来事が引き金になって、失声症になったのではないかということだった。



放っておいても数日から1週間くらいで治る人もいれば、



半年から1年以上かかる人もいたり、



治っても繰り返し発症したりすることもあるという。



大事なのは、声が出なくなった原因、精神的不安などを取り除くことだと言われた。



ただ彼女は、声が出なくなった原因はわからないと、紙に書いて医者に伝えていて、



医者から何を聞かれても、首を横に振るだけだった。



本当に原因がわからないのか、わかっていても話したくないのか、



それは咲下本人にしかわからないことだけど、



なんとなく俺は、いまはその話を彼女に聞いてはいけない気がしていた。



「早く治してあげたいけど、俺もどうしたらいいか……」



「琉生は、琉生のできることをしてあげればいいよ」



翔さんはそう言って優しく微笑む。



「誰かがそばにいてくれるって、心強いもんだよ。ひとりじゃ乗り越えられないことも、ふたりなら乗り越えられるかもしれない」