あたしは彼のほうに振り返った。
彼の瞳を見つめて、あたしは口をゆっくりと開けて動かしてみる。
あれからずっと、失ったままの声。
あたしは首元を手で押さえながら、なんとか声を出そうとするけど、
口から出るのは、やっぱり息だけだった。
どうしてあたし……声が出なくなっちゃったの?
橘くんに話したいこと、
言いたいこと、伝えなくちゃいけないこと
いっぱいあるのに。
どうして出ないの?
どうして……。
いつまで声が出ないままなの……?
もしかして一生……?
そんなの……耐えられない。
耐えられないよ……。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)