逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「……咲……下……?」



波の音にかき消されてしまうほどの小さな声。その声を出すのが、俺にはやっとだった。



彼女が立つ横には、赤色のキャリーバッグ。それをそこに置いたまま、彼女はゆっくりと俺の方に向かって歩いてくる。



「咲下……っ」



俺は彼女に向かって走っていく。



……ずっと、ずっと



待ってるつもりだったよ。



どれだけ時間が過ぎたとしても。



何年経っても。



毎日、咲下のことを想いながら



この場所で



いつまでも、ずっと。



ずっと、ずっと……



待ち続けるつもりだったよ――。



「咲下……」



だけど、本当はすごく。



すごく、逢いたかったんだ……。



瞳に涙を浮かべて微笑む彼女を、俺は強く抱きしめる。



「おかえり」



そう彼女の耳元で呟いた俺は、これが夢じゃないことを祈りながら、



彼女の体を強くぎゅっと抱きしめて、彼女の存在を実感した。



戻ってきてくれて



俺のところに来てくれて、ありがとう……



彼女は俺の背中に手を回し、俺の腕の中で泣いていた。