涼しい風を頬に感じて、俺は目を覚ます。
少しの間、砂浜の上で眠ってしまったみたいだ。
眠たい目をこすりながら、ぼんやりと空を見る。
さっきまで明るかったはずなのに、いつのまにか空は星屑でうめつくされていた。
星が瞬く夜。
キミの笑顔を思い出したいのに。
俺が思い出すのはいつも
キミの泣き顔だ――。
「そろそろ戻るか……」
俺は立ち上がって、服についた砂を手ではらう。
ペンションに戻ろうと振り返った俺は、歩き出そうとした。
――サッ。
足で砂を踏んだ音とともに、俺は驚いて一瞬、動けなくなる。
視線の先には――。
こっちを見つめて立っている彼女がいた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)