さっきは、きっと慌てていたから。



その小さな紙の存在に気づかなかったんだ。



俺はその紙に手を伸ばす。



「…………」



咲下がこの部屋から出ていくときに、俺に残したメッセージ――。



「咲下……」



俺はその紙を強く握りしめたまま、その場に座り込んだ。