朝の光が差し込む明るい部屋。
一瞬、すべてが夢だったのかと思うほど、静かな朝だった。
俺は慌ててベッドから降り、部屋の中を探す。
洗面所、トイレ、浴室、バルコニー。部屋のどこにもいない。
俺は部屋を出て、ペンションの建物の中を探し回った。
気持ちばかりが焦って、どんどん不安になっていく。
だけど、咲下の姿は、どこにもなかった。
俺はそのままペンションから出て、その周辺や砂浜のほうなどへ探しにいった。
「咲下ぁ―――っ」
必死に走って、辺りを探しまわる。
どうして……ひとりでいなくなるんだよ?
咲下……。
何で何も言わずに消えちゃうんだよ?
どうして……。
「ハァ、ハァ……っ」
探しまわっても、どこにも彼女の姿はなかった。
……なんで俺は、気づかなかったんだろう。
咲下が俺の手を離して、部屋を出て行ったとき、
どうして気づけなかったんだよ……。
俺のバカ……。
繋いだ手を
キミの手を離さない
もう二度と離さないって……そう誓ったのに。
キミはまるで星のように。
夜明けとともに、俺のそばから姿を消した。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)