「もう何もかも嫌になった、そう思うときもあったけどさ。つらいことがあったときは、よく耐えてんなー、よく頑張ってんなーって自分で褒めてあげないとな」
橘くんは、優しく微笑んだ。
「生きていれば、またいつか笑えるって、きっと幸せになれるって……そう俺が信じれたのは、咲下のおかげだよ」
橘くん……。
「ありがとな」
こんなあたしでも、誰かの役に立てたの……?
自分の存在なんて無意味だと思っていたのに。
生きてる意味なんてないと思っていたのに。
橘くんの肩にもたれたまま、あたしは涙を流す。
生きていればきっと……
またいつか、笑えるかな。
心から笑えるようになるかな。
あたしは……
幸せに……なれるかな……。
「いつか俺の願い事が決まったら教えるって、修学旅行の夜に約束したこと覚えてる?」
あたしは涙を拭って、小さくうなずく。
……覚えてる。忘れるわけない。
修学旅行の夜、ホテルのバルコニーでゆびきりをした約束。
「本当はずっと前から決まってた」
橘くんの願いが叶うように、あたしも祈ってる。
修学旅行の夜、あたしはそう誓った。
あれからもずっと、祈っていた。
彼がこの世界で誰よりも幸せであるように。
彼の願いが叶いますようにと……。
「俺の願いは、咲下が幸せだって心から笑ってること」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)