あたしは何もしてない。
だけど、あたしが書いた詩がほんの少しでも
苦しんでいた橘くんの
真っ暗な世界にいた橘くんの
……光になれたなら、よかった。
“涙星”
あの詩を書いたあたしは、どんな気持ちでいたっけ?
**********
夜空を見上げたら
今日も涙が流れた
流れて
きらり光って
涙と星は似てる
それとも
涙は、いつか星になるの?
いま見てるこの星が
何年も前の光なら
いつか
星になった私の涙
かき集めたら
大きな光になるかな
つらく悲しい
真っ暗な世界でも
強い光になれるかな
“涙星”
きっとどこかで
誰かも見つめてる
**********
「俺を苦しめた人をすぐに許せるとは思ってなかった。ましてや家族だったしな」
家族……。
橘くんの気持ちがわかる。
家族だからって、何でも許せるわけじゃない。
許すって難しい。
それは他人でも家族でも。
つらかった日々は、心の中から簡単には消せない。
苦しみ、悲しみ、怒り、憎しみ、涙……。
さまざまな感情がいつまでも自分を苦しめる。
「でも、自分のために……許そうって思った」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)