逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「中1の頃、いろいろあってさ。あの頃ホント苦しくて」



橘くんに何があったの……?



「真っ暗で、小さな狭い世界。その世界から逃げ出したかった。でも逃げ出せなくて……」



橘くんも……そんな気持ちになることがあったんだ……。



「あの頃は、その世界がすべてだと思ってた」



橘くんが苦しかったといった中1の頃、



その頃のあたしは、親友だと思っていた子に裏切られて、クラスメートたちからイジメを受けていた。



学校という小さな世界。



暗くて息苦しい世界から逃げ出したかった。



あの頃、そんなふうに考えていたのは、



この世界であたしだけじゃなかったんだ。



「“なんで俺だけが”って思ってた……あの日、咲下にぶつかってノートを拾うまでは」



あの日、道で出逢ったあの人は、やっぱり橘くんだったんだ。



「俺を真っ暗な世界から連れ出してくれたのは、咲下だったよ」



橘くんはあたしの瞳を見つめて微笑む。



「ありがとう……咲下」