☆凜side☆
――――――……
どれだけ涙を流したんだろう。
どれだけ時間が経ったんだろう。
窓の外も部屋の中も暗くて静かで……波の音さえも遥か遠くに聞こえる。
夜明けは……まだ来ない。
ベッドの上にふたり、壁にもたれて座っていた。
ふたりで1枚の毛布に包まり、
橘くんは、あたしが泣いてる間もずっと、
何も言わずにただ黙って、あたしの小さな手を握りしめてくれていた。
――あの夜を思い出した。
あたしの部屋で、朝までこうして手を繋いで一緒に眠ったあの夜。
あたしは頭を傾けて、彼の肩にもたれた。
「……眠れない?」
彼の優しく低い声が、頭の上から聞こえた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)