「お母さんのこと、大切に思ってる?」
咲下は涙を拭いながら、コクンとうなずく。
「お母さんの気持ち、わかるだろ……?」
死んじゃダメだよ。
「お母さんが咲下を生んだのは、生きて欲しいから……世界でいちばん幸せになって欲しいからだよ。だから……」
悲しくて、苦しくてどうしようもないときもあると思う。
そんなとき、自分のために生きることが苦しいなら、
大切なお母さんのために……
「……生きて……。もう、ひとりにはしないから……」
そう言って俺は、
泣いてる咲下を、そっと抱きしめた。
たくさんの涙も
傷ついた心も
すべて抱きしめる。
大丈夫、ひとりじゃない。
もう絶対、ひとりぼっちにしない。
俺がいる
そばにいるよ……咲下。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)