動かないでくれ……。 そこにいて。 上を見上げていた咲下は、ゆっくりと前を向いた。 「咲下ぁ―――っ」 何度も叫んだ。 叫び続ける俺の声に、彼女は1度も振り返らなかった。 それ以上、行っちゃダメだ。 行くな。 ダメだ……行かないで。 力の限り必死に叫んだ。 「やめろぉ―――っ」 あと少し。 あと、もう少し。 走っていく俺は、彼女の背中に向かって手を伸ばす。 あと少し――。 彼女の背中に触れることのない俺の指先。 届かない……手……。 その瞬間、彼女は崖から飛び降りた――。