「凜……。今日はもう遅いから、家に帰りなさい。帰り道に気をつけるのよ」
まだお母さんといたい。
帰りたくない。
でもお母さん、話すのも少しつらそうに見える。
「……わかった」
「じゃあね、凜」
お母さんがムリして笑ったことくらい簡単にわかるけど、
知らないフリをして、あたしも笑顔を見せる。
「また来るね」
そう言ってあたしは、病室を出た。
ねぇ、お母さん……。
あたし、なんか怖い。
すごく怖いんだよ。
なんでこんなに不安なんだろう。
「ちょっといいかな?」
病室を出たあと、廊下で看護師の女性に呼び止められた。