逢いたい夜は、涙星に君を想うから。





――――――……



「琉生、今日もお疲れさま」



翔さんは笑顔で俺の肩をポンと叩いた。



夕食の片付けも終わり、今日の俺の仕事は終わりだ。



俺は階段を上がって、2階の奥にある自分の部屋に戻る。



部屋に入った瞬間、開けてあった窓から心地いい潮風を肌に感じた。



俺は冷蔵庫からジュースのペットボトルを取り出して、部屋からバルコニーに出た。



何気なく海の方に目を向けると、砂浜を歩いている人影が見える。



だけど暗くて顔などもハッキリとは見えない。



もう夜だし、観光客じゃなくて地元の人が散歩でもしてるのだろう。



寄せては返す静かな波の音を聞きながら、俺は夜空を見上げた。



夜空にちりばめられた星屑。



「……ふぅ」



この空を見ていると、思い出すのはやっぱり修学旅行の夜のこと。



この部屋のカギにつけた星砂のキーホルダーを俺は握りしめる。



さっき翔さんが高校の頃に付き合っていた彼女のことを話してくれたときに言っていた言葉……。



“あの頃のことは一生忘れない大切な思い出だから”



俺もいつか時間が経って、



何年もの月日が流れて。



咲下のことをそんなふうに誰かに話す日が来るのかな。



咲下を思い出に……。



俺は、大切な思い出の中に、記憶の中に。



キミを閉じ込めるのかな……。



目を閉じると、一瞬時間が止まったかのように、風がピタッと止んだ。



“助けて――”



聞こえたのは、咲下のいまにも泣きそうな声。



パッと目を開ける。



……そんなわけないよな?



海の方を見ると、さっき砂浜を歩いていた人影はいつのまにか消えていた。



俺の……見間違いだよな……?