電車に乗ってから約2時間後、前に住んでいた街にあるお母さんのお墓の前に、あたしは立っていた。
お墓の前に、白い百合の花束を供えた。
あたしは胸の前で手を合わせ、目を閉じる。
……ねぇ、お母さん。
お母さんの娘が、あたしでごめんね。
こんな娘じゃなかったら、お母さんは……
幸せだったかな。
もっと優しくしてあげられたらよかった……なんて。
後悔しても遅いよね。
いつもあたしは自分のことばっかりで、お母さんに甘えるばっかりで。
お母さんはきっとすごくつらいのを我慢していたはずなのに、あたしは何もしてあげられなかった。
一緒に暮らして、いつだってそばにいたのに、手遅れになるまで病気にも気づいてあげられなかった。
もっと早くにあたしが気づけていたら、お母さんはいまも生きていたかもしれないのに。
お母さんが死んだのは、あたしのせいだよ。
何ひとつ親孝行も出来ないまま、お母さんを幸せにしてあげることも出来ないまま、あたしはお母さんを死なせてしまった。
本当にごめんね……。
お母さんはいままで、つらいこと苦しいことたくさんあったのに。
笑わせてあげられなくて、幸せに出来なくてごめんね……。
ねぇ、お母さん。
あたしの声、聞こえてる……?
あたしね……声を失ってしまったみたいなんだ。
あたしにはもう失うモノなんてないって、そう思っていたのに。
いつだって大切だと気づくのは、失ったあとなんだね。
お母さんには、あたしの声……聞こえてるかな。
あたしがここに来るのは、今日が最後になると思う。
ごめんなさい。
でもね、お母さん。
お母さんに逢いにいく。
これからはずっと、お母さんのそばにいる。
もう、寂しくないよ。
だからね、悲しい顔しないで?
泣かないで……お母さん――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)