――本当はずっと、心のどこかで思ってた。
自分のせいで、お母さんを失ったのかもしれないって。
そんな自分を認めたくなんかなくて、どうしようもなく苦しくて。
誰かのせい……父親のせいだと言い聞かせてきた。
そうでも考えなきゃ、自分が壊れてしまいそうだった。
お母さんの病気のことも、もっと早く気づけたはずだった。
手遅れになる前に、病院に無理やりにでも連れていけばよかった。
お母さんは離婚してから、心の病を抱えていた。
そのせいで、時々様子がおかしくなるお母さんが怖く思うときもあった。
イライラさせられたり、鬱陶しく感じることもあった。
お母さんなんていなくなればいいのにとさえ思ったこともあった。
最低だった。
本当はお母さんのこと大好きなのに。
世界でいちばん大切な人だったのに。
お母さんが心の病気じゃなくなれば、もっとお母さんと楽しく過ごせるのにって思ってた。
あたしはずっと、心の病のせいにして、苦しんでるお母さんの気持ちをわかってあげられなかった。
だからあたしに罰が当たったんだと思う。
お母さんに病気が発覚して、末期のガンだった。
あたしに残されたお母さんと過ごす時間は、あまりにも短かった。
本当の病名も余命も告げないことは、お母さんのためだと思って決意したけど……本当は自分のためだったのかもしれない。
あたしには、お母さんが絶望する姿を見る勇気がなかった。
お母さんは、自分の本当の病名も余命のことも知りたかったかもしれない。
死んじゃう前にやりたかったことが、あったかもしれない。
そんな時間さえも、あたしが奪った。
お母さんが死んでから、何度もお母さんの夢を見た。
夢の中のお母さんは、いつだって悲しい顔であたしの前に現れた。
寂しそうに、涙を流していた。
ねぇ、お母さん。
ごめんね。本当にごめん。
お母さんが死んじゃったのは、あたしのせいだね。
どんなに夢の中で謝っても
罪が消えることはない。
だからせめて、大切な人のそばで
お母さんのそばで
あたしは罰を受けようと思ったの。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)