ポタッ、ポタッとあたしの瞳から、大きな涙の粒が床に落ちていく。
「母親が死んだのは、俺のせいか?」
「そうよ!全部アンタのせい……」
「そんなに大切に思っているなら、なんで手遅れになるまで母親をほっといた?」
父親は鋭い目つきであたしを見た。
「母親が余命宣告されるまで、本当に病気だと気づかなかったのか?」
「な、なに言ってんの……?何も知らないくせにっ」
膝がガクガクと震えだす。
「そうだ。俺は知らない。母親と暮らしていたのは凜なんだからな」
「何が言いたいの……?」
「気づいたときには末期のガン。病気がわかる前から、母親の具合は悪かったはずだ。なのに病院へは連れて行かなかった?どうしてだ?」
「だ、だって……」
「もっと早くに病院へ行けば、母親は助かったんじゃないのか?」
やめて……。
「俺のせいにしてばかりで、自分はどうなんだ?」
やめて……。
「アイツは頭がおかしかった。あんな母親、いなくなればいいと思ってほっといたんじゃないのか?」
「もぉやめてよっ!」
そう叫んだあたしは、涙で滲んで憎い父親の顔さえもよく見えなかった。
「……母親が死んだのは全部俺のせいか?」
お母さんが死んだのは……。
お母さんを死なせたのは……。
……あたしだ。
あたしは包丁を握ったまま、その場に崩れ落ちる。
「……うっ……うーっ……」
あたしのせいでお母さんは
死んじゃった
あたしのせいだ。あたしの――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)