逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




あたしは見下したように父親の顔を見つめて言った。



「のえるを連れて、あの人が家を出て行ったのは何で?」



父親はあたしから視線を逸らして黙り込む。



「何で答えないの?あぁ……まさかとは思うけど、また不倫でもした?」



父親はテーブルの上のウイスキーの入ったグラスを持ち、それを飲み干して、氷の入ったグラスを部屋の壁に勢いよく投げつけた。



――バリンッ。



グラスが粉々に割れた大きな音が部屋に響き、破片が音をたてて床の上に散らばった。



父親はソファーに座ったまま前で手を組み、うつむいた。



「図星?へぇ、本当に不倫してたんだ?」



そのことが、あの人にバレて、彼女はのえるを連れて家を出て行ったんだ。



プライドが高そうな彼女なら、ありえなくもない。



あたしと顔を合わせる前に、この家をすぐさま出て行ったんだろう。



彼女はいままで散々、あたしのお母さんをバカにしてきた。



あたしの家族を壊したのは、自分じゃないと彼女は言い続けてきた。



勝ち誇った目で、いつもあたしを見下してた。



人の家族を壊してまで奪った父親と新たな家族を築き上げていた矢先に、今度は自分の家族を他の女に壊されたんだ。



自分がしたことは、いつか自分に返ってくる。



あたしは、彼女に同情するつもりはない。



だけど、幼いのえるには何も罪はない。



自分と同じ苦しみを味わうのかと思うと、あたしはのえるのことが可哀想でたまらない。



「なんで……?なんでそんなことするの?」



あたしは、心の中でずっとピーンと張りつめていた糸が切れてしまったように、



すでに自分を止めることはできなかった。



「なんで簡単に家族を裏切れるの?どれだけの人を悲しませれば気が済むのよぉっ!」