夜も遅く、辺りはしんと静まり返っている。



家のドアの前に立ち、カギを差し込んだ。



あれ……?



玄関のカギ、開いてる。



――ガチャ……バタン。



家の中に入ると、真っ暗だった。



のえるはとっくに寝てる時間だろうけど、父親も彼女も部屋でもう寝た……?



いつもならまだ起きてる時間なのに珍しい。



音を立てないよう静かに廊下を歩いていくと、リビングのほうからテレビ画面の光と、小さな音声が聞こえてくる。



なんだ……やっぱり起きてたんだ。



そのとき、足で何か柔らかいものを踏んだ。



暗くて何か落ちてることに気づかなかったけど、それを拾い上げると普段のえるの母親が料理をするときに使っているエプロンだった。



なんで、こんなとこにエプロンが落ちてるの……?



不思議に思ったあたしは、エプロンを手に持ったまま、リビングに向かう。



暗い部屋の中、テレビ画面の光だけがチカチカしていて、ソファーに座っている父親の後ろ姿が見えた。



あたしは部屋の隅にあるスイッチを押して、リビングの明かりをつける。



すると、そこには驚くべき光景が広がっていた。



「……なに……これ……」