――ガクンッ。
頭が揺れて、あたしはパチッと目を開ける。
「……ぐすっ……っ」
目が覚めると泣いていた。服の袖で目元をそっと拭う。
……お母さんの夢を見てた。
どうやらあたしは、駅前のカフェのテーブルに突っ伏して、いつのまにか眠ってしまったみたい。
今日は朝から働けるところを探して1日中あちこち歩き回っていた。
役所にも行って、住み込みで働ける求人をパソコンで検索したけれど、
車の免許もない、専門的な技術・資格もない、アルバイトの経験さえもないあたしには、応募資格すらない求人ばかりだった。
夕方、求人情報誌を手に駅前のカフェに入って、窓際のカウンター席に座り、ミルクティーを頼んだとこまでは覚えてる。
寝不足とはいえ、こんなところで寝るなんて自分でも驚いた。
時計を見ると、夜の10時前。
カバンからケータイを取り出して見るけど、のえるの母親からの着信はなかった。
門限はとっくに過ぎている。
彼女から電話がないということは、高校卒業したから門限はもう守らなくていいのだろうか?
いずれにしろ、そろそろ家に帰らないと何を言われるかわからない。
あたしはテーブルの上に広げた求人情報誌をカバンにしまい、お店を出ていく。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)