学校からの帰り道、陽太とあたしは並んで歩いていく。
「今日は自転車で学校まで来なかったんだね」
「卒業式やし、最後の通学路やけん、歩こうと思って」
「そっか……」
あたしを駅まで送ってくれるといった陽太。
いつも教室にいても、しゃべりっぱなしってくらいなのに。
さっきから、ずっと黙ったまま。
今日でこの道を歩くのも最後なんだと思うと、胸が締めつけられた。
踏切が見えてくる。もうすぐ駅だ。
いつも一緒に過ごしたあたしたち。
今日でお別れだね。
明日から別々の道へと進んでいく。
歩きながら、陽太の横顔を見つめた。
いろんなことがあったね……陽太。
一緒に過ごした時間は、忘れないよ。
いつまでも、その明るい笑顔で。
周りの人たちを幸せにして。
陽太は陽太のままで。
変わらず、素敵な人でいて。
「送ってくれて、ありがとねっ」
ほとんど会話をすることもないまま駅前に着いた。
人々が行き来する中、あたしと陽太は向かい合って立つ。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)