「……そうだったね」
「なんで凜はひとりで頑張ろうとするん?人は……ひとりじゃ生きていけん」
人はひとりじゃ生きていけない。
陽太はそう言った。
それでも、あたしはひとりで生きていかなきゃいけない。
明日からはもう、あたしのそばに陽太はいないんだ。
これから新しい世界で生きていく。
あたしはもう子供じゃない。
つらくても、頑張らなくちゃ。ひとりで頑張っていかなきゃ。
「それに……凜は、ひとりやないやろ?」
「え……?」
「ずっと、心の支えにしとったやつがおるやろ?いまも変わらず……」
胸がぎゅっと締め付けられる。
「そいつの前やったら……凜は無理せんで、おれるんやろ?」
どうしようもなく悲しいとき、つらいとき、あたしを助けてくれた人。
願いが叶うようにと、星砂のキーホルダーをくれた人。
あの街を離れてからも、あたしの心を支えてくれた人。
そばにいて欲しい、そばにいたいって思った人。
生まれて初めて恋をして、心から幸せを願った人。
――橘くん。
あたしはずっと、ひとりじゃなかった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)