「俺、誰かに憧れられるほどの男やないよ?」
「そんなことない。あたし、陽太に出逢えて本当によかった……」
親友に裏切られて、イジメに遭った過去。
友達なんていらない。
もう二度と、仲良しの友達なんて作らないって。
そう思ってた。
信じたら裏切られる。裏切られて捨てられる。
あんな思いをするくらいなら、ずっとひとりでいい。
傷つきたくなくて逃げてきた。
だけど、陽太と出逢って、あたしはもう一度思えた。
この人と、友達になりたい。
自分でも不思議なくらい、自然と心から思えたんだよ。
陽太はあたしにとって、そういう特別な存在だった。
「陽太は、これからも陽太らしく生きて」
「ん……わかった。俺が凜のこと諦めるかわりに、凜も自分の幸せ考えろ」
「わかってる。これからは、強くたくましく、ひとりで生きていくっ……イタッ」
陽太は、あたしのおでこに思い切りデコピンをした。
「前に……凜が眼帯して学校に来よった日、“俺が凜のこと守ってやるけん”そう言うたん覚えとる?」
「え?あ……うん」
「あのとき凜は、こう言うたよな?“あたしはひとりで大丈夫”そう俺に言うた」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)