「陽太の言葉で大事なことに気づいた。あたし……やっぱり陽太の気持ちは受け取れないよ……ごめんね……」
「……ほうか、ん……わかった」
「ごめん……ホントにごめんね……」
「何で謝るん?」
うつむくあたしの頭に手を乗せて、髪をグシャグシャとする陽太。
泣きそうになるあたしは、きゅっと下唇を強く噛みしめる。
「凜は何も悪くないけんな」
あたしはうつむいたまま、頭を横に小さく振った。
「本当にごめんなさい」
「凜に謝られると、俺もツライ。やけん、もう謝らんで」
そうやって明るく言ってくれる陽太の優しさに、あたしは胸が痛んだ。
「ねぇ……陽太」
あたしは顔を上げて陽太を見つめた。
「陽太は、あたしがなりたかった憧れの人だよ」
たとえ、本当の自分を隠して無理をしていたとしても。
あたしが陽太の前でいつも笑っていたのは、陽太のような人になりたかったからだよ。
明るくて眩しい……その笑顔で周りのみんなを明るく照らす
太陽みたいな君に、ずっと憧れてた。
だけど、あたしには眩しすぎて、どんなに手を伸ばしても遠くて、届かなくて。
陽太といると楽しかった。それは嘘じゃない。
でもね、あたしはいつだって元気に見せようと、陽太の前で無理してしまっていた。
暗くて、ひねくれた本当のあたしを知られたくなかった。
そういうあたしの気持ちも、陽太はきっと気づいていたんだろうけど、
それでもあたしは、陽太の前で素直になれない。
元気に笑うあたしだけを見て欲しいって思っちゃうの。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)