「そんなの……陽太が幸せになれないよ」
「俺のことは後回しでええよ。俺の気持ちは凜を幸せにしたい、今はそのことしか考えてない」
幸せって……誰かに与えてもらうもの……?
「俺は、人と人が何か想い合う時の気持ちは、初めから同じなわけないって思っとる」
陽太の言いたいことはわかる。
たとえば、付き合っている恋人が、最初からふたりとも同じ気持ちだったとは限らない。
友達関係だってそう。自分は相手を親友だと思っていても、相手はただの友達くらいにしか思っていない場合もある。
過去のあたしが親友に裏切られたように。
人の気持ちなんて、目には見えない。
最初から相手と自分が同じ気持ちでいるなんて、奇跡に近いこと。
「やけん、誰かに愛されたいんなら、自分から愛さないといかん。誰かに信じて欲しいんなら、自分が信じないといかん。それが俺のモットーや」
誰かに愛されたかったら、自分から愛さなくちゃいけない。
誰かに信じて欲しかったら、自分が信じなくちゃいけない。
人と人が何かを想い合う時、最初から同じ気持ちなわけがないと言う陽太は、
相手に望むのではなく、自分から行動する。
それが陽太の考え方だった。
確かにそうかもしれない。
でもそれは、陽太が周りの人たちに大切にされて、愛されて生きてきたからこそ言える言葉。
傷つくことを恐れずに誰かを愛することができたから。
他の誰かに与えられるほどの愛を、陽太は周りの人たちから受け取ってきたから。
でも、あたしは違う。そうじゃない。
だけど、陽太の言葉で大事なことに気づいた。
「陽太の考え方は素敵だと思うよ。でもあたしは、陽太に幸せを与えてもらうだけの人生を選ぶの……?」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)