――――――……
寒さ厳しい冬も通り過ぎて、桜の蕾が膨らみ始めた3月中旬。
あたしは高校の屋上にひとりでいた。
穏やかな風を感じながら、晴れた水色の空を屋上から見つめている。
今日は、卒業式だった。
体育館で卒業式は行われ、ついさっき終わったところだ。
「ここにおったんや」
その声に振り向くと、屋上のドアの前で、笑顔の陽太が立っていた。
「陽太……」
陽太はあたしのほうに近づいてくる。
「気づいたらいなくなっとったけん、凜のことずっと探しとった」
「……もう帰ったと思った?」
「凜のことや。ありえなくないやろ?」
「ふふっ……」
陽太はあたしの隣に立ち、柵にもたれかかった。
「終わっちゃったね……卒業式……」
「ん……」
「泣いてたね、陽太」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)