「親父さんは何て……?」
「俺が本気でやりたいと思うことなら、反対はしないって。だけど……」
「だけど?」
「帰りたくなったら、いつでも帰ってこいってさ」
話の最後に、親父は俺にそう言ってくれた。
「親父さん、ホントに変わったな。よかったな……」
そう言ってくぼっちは、俺の肩を抱く。
「俺も橘と離れんの寂しいよ~」
「じゃあ……くぼっちも一緒に沖縄行く?」
「いえ、俺は進学します」
「冗談だよ。大学の夏休みにでも彼女とか友達と遊びにくれば?」
「行く行くーっ!絶対行くーっ」
楽しそうに鼻歌を歌いだすくぼっちを見て、俺は微笑む。
「じゃあ~いつにしよっかな~沖縄旅行。カレンダー見よーっと」
そう言ってくぼっちは、ブレザーのポケットからケータイを取り出した。
「ちょっと待て、早くね?夏休みまであと何ヶ月あると思ってんだよ?それにまだ大学に行けるかもわかんねーだろ?」
「そーだなーって……オイッ!大学は受かって見せますわ!」
「大丈夫か?勉強がんばれよ~」
「がんばってますよ……」
肩をガクッと落としたくぼっちの背中を、俺はポンポンと優しく叩いた。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)