――――――……
「そっか。更紗ちゃんは、おまえへの気持ちを吹っ切って前に進んだってことか……」
そう言ってくぼっちは、俺の顔を真剣な表情で見つめる。
俺は机の上で頬杖をついたまま、教室の窓の外に目を向けた。
「吉野は自分の気持ちにちゃんとケジメつけて前向いてんのに、俺は同じとこにずっといるだけだよな……」
俺が小さくため息をつくと、くぼっちは呟くように言った。
「……正解なんて、あんのかな?」
「え……?」
「忘れたくないなら、ムリに忘れなくていいと思うよ?」
「くぼっち……」
「忘れたくて、気持ちにケジメつけて吹っ切った更紗ちゃんも。忘れたくなくて、一途に咲下を想い続けるおまえも。俺はどっちも間違いだなんて思わねーよ?」
「だけど……咲下には彼氏がいてさ。ふたりが一緒にいるとこも俺見てんのに……」
「叶わない想いは意味ない?俺はそうは思わねーけど」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)