逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




吉野の顔を見ると、彼女の目には涙が溢れていた。



『……ごめんな』



彼女はうつむき、頭を横に小さく振った。



『橘くんの気持ちはわかってた……。でも最後に望みをかけたの』



『え……?』



『最初に告白したとき、橘くんに好きな人がいるって聞いて、諦めようと思った』



吉野は顔を上げて、俺の目を見つめた。



『でもあとから、その相手が転校しちゃった子だって知って、離れてる子よりも、頑張ればそばにいる更紗を選んでくれるかもしれないって思ったの』



『吉野……』



『でも橘くんはやっぱり……彼女を忘れられないんじゃなくて、忘れたくないのね。橘くんの心にはあの子しかいなくて、更紗が入る隙は1ミリもなかった……』



吉野は目に涙をためて、俺に微笑んで見せた。



『これでやっと前に進める。橘くんへの想いを吹っ切れる。二度の告白も、更紗にとっては無駄じゃなかった……』



そう言った瞬間、吉野の頬には涙が伝った。



『橘くんを好きになってよかった』



吉野は涙を腕で拭い、笑顔で言った。



『きっと、もう少し時間が経ったら……橘くんの恋を応援できるようになると思うっ』



『……ありがとう……吉野……』



『いつかまた誰かを好きになったら……今度は幸せになれるかな……?』



『なれるよ、絶対』



俺は吉野の目を真っ直ぐに見つめて言った。



『……橘くんに言われると、本当にそうなれる気がするねっ』



そう言って吉野はうれしそうに微笑んだ――。