逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




――俺は、あの夜のことを思い出していた。



あの日の夜、吉野を家まで送ると、家に親が帰ってくるまで不安だから一緒にいて欲しいと言われた俺は、吉野の部屋にいた。



部屋の中、ベッドを背にしてふたり並んで床の上に座っていた。



吉野に、いまも咲下を好きなのかと聞かれ、俺は咲下への想いを吉野に打ち明けた。



『本当に心から忘れたいって思うなら、試してみる?』



俺が咲下を好きでもかまわない、吉野はそう言って……



『咲下さんのこと、更紗がいつかきっと……忘れさせてあげる……』



床についた俺の手に、吉野は上から手を重ねた。



『だから……試してみて……?』



吉野が俺に顔を近づけてきた瞬間、俺は顔を背けた。



『傷つくだけだよ……吉野も俺も』