☆琉生side☆
――――――……
帰りのHRが終わり、机の上のカバンに教科書やノートを詰め込んでいると、俺の元にくぼっちがやってきた。
くぼっちは、俺の前の席のイスに横向きで座った。
「今日さ、2年ときのクラスのやつらとフットサルやろうって話あんだけど……もちろん琉生くんも行きますよね~?」
満面の笑みのくぼっちを見たら、なんか断れない。
「……行くよ」
「よしっ」
そのとき、俺たちの横を吉野が通り過ぎ、彼女と目が合った。
「また明日ねーっ!バイバーイ」
そう言って吉野は笑顔で俺たちに手を振り、友達と教室を出ていく。
くぼっちも俺も、吉野に手を振り返した。
教室から吉野の姿が見えなくなると、くぼっちが俺の顔をジッと見つめる。
「……なんだよ?」
「前から思ってたんだけどさぁ……席替えして隣の席じゃなくなってから、おまえと更紗ちゃんなんかヘンじゃね?」
「ヘンてなにが?別にフツーだけど」
「もしかして、更紗ちゃんとなんかあった?」
俺は黙ったまま、カバンの中にノートを入れる。
「まさかとは思うけど……俺には言えないことしちゃった?」
「勝手に想像すんなよ」
「じゃあなに?なんかあったんだろ?」
「……なんかあったのかって聞かれたら、あったけど……」
あれは、吉野がヘンなヤツに後をつけられて、俺が吉野の家まで送っていった夜のこと――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)