――コンコン、ガチャ……。
2階の自分の部屋にいると、のえるの母親がやってきた。
「あの子……歩き疲れたみたいで、眠っちゃったわ」
「そうですか……」
「さっきは頬を叩いて、ごめんなさいね」
そう言って彼女は、あたしを見つめた。珍しく素直に謝る彼女に、あたしは驚きを隠せない。
「あの子を見つけてくれてありがとう」
「のえるがいなくなったのは、あたしのせいですから……」
「……寒いからお風呂に入って温まりなさい」
そう言い残して、彼女は部屋を出ていった。
あたしはイスに座り、デスクの上に置いたのえるが作ってくれた紙粘土の星を見つめた。
あたしはポケットから星砂のキーホルダーを取り出し、星の隣にそっと置く。
――生きていれば
大切なモノは、自然と増えていくだろう。
だけど失ったモノが大きすぎて
どんなに大切なモノをかき集めても
心の隙間を埋めることは出来なかった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)