「えほんにかいてあったの。ホンモノのおほしさまは、とおいとおいところにあるって」
「うん……そうだよ。本物のお星様は遠くて誰にも掴めないの」
のえるは、寂しそうにうつむく。
「りんちゃんに……わらってほしかった……」
のえるは泣きそうな声で言った。
「だって、りんちゃん……いつもかなしいカオしてる」
「のえる……」
「りんちゃんは……どぉしたら、のえるのことスキになってくれる……?」
のえるの瞳から涙がこぼれ落ちた。
「……っ……っく……」
のえるは、何も言わなくても。
あたしの想いをずっと感じとってたんだね。
こんな幼い子に、悩ませて、悲しませて。小さな心を傷つけた。
「りんちゃんが……のえるのことキライでも……のえるは、りんちゃんのことスキだよ……」
その言葉に、涙がこぼれた。
のえるがあたしの頭に手を置いて、そっと優しく撫でてくれた。
「なかないで?りんちゃん……」
「……ん……っ……」
「りんちゃんがかなしいのイヤだよ。のえるもかなしくなる……」
「ごめんね……ホントにごめん……」
あたしは、のえるをぎゅっと抱きしめた。
「ホンモノのおほしさまをあげたら……りんちゃんがよろこんでくれるっておもったの」
それであたしに黙って探しに出掛けたんだ。
たったひとりで。心細かったはずなのに。
「ううん……。宝物は、本物のお星様じゃないよ。のえるがくれた、たくさんのお星様だよ」
「ホントにぃ?」
「うん。でも、ありがとね……」
あたしは、のえるの体を離した。
のえるの冷たくなった頬に触れ、かじかんだ小さな手をそっと握りしめた。
「おうち、帰ろっか?」
「うんっ」
空からは、粉雪が舞い降りはじめていた。
小さな手をぎゅっと握りしめて、歩いていく。
あたしと手を繋いで嬉しそうに笑うのえるを見て、あたしも優しく微笑んだ。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)