満面の笑みであたしを見つめるのえるに、あたしは顔を背けた。
「それ、作ってたの?」
「うんっ!りんちゃんにあげるっ」
「ありがとね……」
のえるの顔を見ずに、あたしはノートに目を向けたまま言った。
「いらない……?」
のえるの悲しそうな小さな声が聞こえた。
「そんなことないよ」
「りんちゃん……」
「いま宿題してるから、ひとりで遊んでて」
「のえる……りんちゃんといっしょにあそびたい……」
「宿題してるって言ってるでしょ?あっちいって」
「……はぁい」
のえるは、あたしの部屋の床に紙粘土の星をそっと静かに置いて、部屋を出て行った。
のえるが部屋を出て行ったあと、あたしは窓の外を見つめて大きなため息をつく。
のえるに優しくできない……。
頭では、ちゃんとわかってる。
のえるには何も罪はないこと。
のえるはまだ何も知らない。
あたしたちが異母姉妹ということも、のえるの母親があたしの家族を壊したことも。
幼いのえるには、理解できないことばかりだ。
それでも、あたしがのえるに優しくしたら、死んだお母さんを裏切るような気がしてならなかった。
だけど、のえるに冷たくするたび、なぜか自分まで傷ついた気持ちになる。
複雑だった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)