「あたしのこと心配してくれるのはうれしいけど、本当に平気だから」
陽太の顔を横から覗き込んで、あたしは笑顔を見せた。
「それに、後ろ向きなこと考えるくらいなら、前向きなこと考えるって言ったの陽太じゃん」
「凜と俺は違うやろっ」
「……何が違うの?」
そうだね。確かに違う。
違う世界の人間だって、最初からわかってたよ。
陽太とあたしは全然違う。
だけど、あたしだって陽太みたいになりたかったよ。
あたしは陽太に憧れてた。
頑張れば、陽太みたいになれるかもしれないって思ったこともあったよ。
だけど、どう頑張っても陽太にはなれない。
「凜は結局、誰のことも信じてないんやね」
「……そんなことないっ」
「やったら、俺のこと信じとる?」
「陽太……。もちろんだよ」
「信じとるんなら、嘘つかんでええやろ」
胸がぎゅっと締め付けられるように痛かった。
「俺は……嘘つけなんて言うてない。つらいときにムリして笑えなんて言うてない。何があったんか話してくれんと何もできんよ」
いつだって真っ直ぐで。
「凜を苦しめとるんは何……?」
力強い瞳で。
「俺が、凜のこと守ってやるけん」
だけどその優しさが、
今のあたしにはつらかった――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)