逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「ハァ、ハァっ……何しよるん!?危ないやろっ!」



後ろから抱き締めてあたしを動かなくさせたのは、陽太だった。



「陽太……」



陽太が追いかけてきてたことにも気付かなかったくらい、あたしは夢中だった。



――カンカンカンカン……。



「離してっ!陽太っ」



駅はもうすぐそこなのに。



もう目の前なのに。



「行かなきゃ……」



「アホっ!死ぬに決まっとるやろ!」



だって、いま行かなきゃ間に合わないかもしれない。



橘くんが……行っちゃう。



会えないまま、行っちゃうよ。



あたしを抱きしめる陽太の腕は力が強くて、どんなにもがいても、ほどくことが出来なかった。



――カンカンカンカン……。



踏切の音を聞きながら、その場から動けずにいる。



瞳に涙が溢れて、夏の生温い風が、あたしの髪をなびかせた。



そのとき、すぐそばの駅から発車した電車が、ゆっくりとスピードを上げながら、あたしの目の前を通り過ぎていく……。



あたしは陽太に後ろから抱きしめられたまま、その電車を見つめていた。



早く通り過ぎて……。



踏切、お願い……早く開いて……。



すると、そのとき……。



「……橘……くん……」