☆凜side☆
「失礼しました」
あたしはペコッと小さく頭を下げて、職員室を出ていく。
「凜っ!」
声のほうに振り向くと、陽太が廊下の向こうから走ってきた。
「ここにおったん?ハァ、ハァ……やっと見つけた」
「なに?陽太。部活は?」
「これからや」
「まだユニフォームに着替えてないの?もう部活始まってんじゃない?」
「着替えよう思うとった時に陽葵から電話がかかってきよって、凜のことずっと探しとった。職員室におったん?」
「うん。ちょっと先生に呼ばれて……で、何かあたしに用?」
「陽葵に、凜のこと呼んで来て欲しいって頼まれたんやけど」
「陽葵ちゃんに?」
なんだろう……?
スカートのポケットからケータイを取り出す。陽葵ちゃんから着信があったことに、いま気づいた。
「正門のとこで凜のこと待っとる人がおるって言いよったけど、誰かと待ち合わせでもしよるん?」
あたしのことを待ってる人……?
「誰とも待ち合わせなんてしてないけど」
「とにかく行ってみようや」
陽太はあたしの腕を掴んで、廊下を走っていく。
いったい、誰が……?
心あたりも全然ない。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)