逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




交差点の横断歩道の前、信号が赤になり俺は立ち止まる。



空を見上げて、大きく息を吐き出した。



あの日から立ち止まったままだったのは、俺だけで。



咲下は、この街で。新しい出逢いの中で。



ちゃんと今を生きてた。



俺の知らない咲下の時間。



それは、これからも増えていく。



咲下が笑って過ごしてるなら……本当によかった……。



キミが抱えてる悲しみや苦しみは、きっと、そばにいる人が癒してくれる。



俺は何もできなかったから。



そばにいることさえもできなくて、どんなに想っていても無力で。



でも、この想いを終わらせたくなくて、“いつか”を信じようとした。



いまは離れていても、きっと、いつか迎えに行く……それからは同じ道を歩きたい……って。



勝手に心の中で信じてた。



初めから俺の片想いだって、わかってたはずなのに。



それでもやっぱり、答えを知って。



これで本当に終わると思うと……つらいな。



想いを告げることも、ノートのことも何も言えずに。



この恋は終わっていくんだな……。



目を閉じると、咲下の顔が浮かんだ。



微笑むわけでもなく、泣いてるわけでもない、彼女の顔……。



目を開けると、青い空に消えていった。



「幸せにな……」



交差点の信号が青になり、俺は歩き出す。



今度こそ、本当にサヨナラだ……。






――高3の夏。



想い続けた初恋は、静かに終わってゆく。