しばらくの間、俺は正門の前で咲下の姿を探しながら待ち続けた。
だけど咲下らしき女の子は見つからない。
来るの遅かったか……もう帰っちゃったのかもな。
せっかくここまで来たし、あともう少しだけ待ってみることにした。
「あのぉ……誰か待っとるんですか?」
俺に話しかけてきたのは、方言まじりの女の子。
「この辺りの高校では見ん制服やけど……」
「あ、えっと……もしかして咲下……咲下凜て女の子、知ってる?」
「えっ?凜ちゃんの知り合い?」
彼女はどうやら咲下のことを知っているみたいだ。
もしかしたら咲下に会えるかもしれないと、俺は一気に期待が高まる。
「凜ちゃんの友達の陽葵ですっ!よろしくっ」
そう言って彼女は、明るい笑顔を見せた。
「あ、どーも。橘です」
俺はペコッと小さく頭を下げた。
「橘くんは……凜ちゃんと、どういう関係?」
「前の学校でクラスメートだったんだけど……」
「へぇ~!」
「咲下が元気にしてるか気になって、そんで会いに来たんだけど……咲下、まだ学校にいるかな?」
「凜ちゃんと約束しとらんの?」
「うん……ケータイ番号知らなくて」
彼女は目を細めて、俺の顔をジッと見つめた。
もしかして怪しまれてる……?
完全に怪しまれてるな。
どーすっかな……。
「橘くん」
「あ、はい」
「少し待っとって?いま凜ちゃんに電話してみるけん」
「ホントに?ありがと」
彼女は笑顔で頷き、ケータイを取り出した。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)