逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「なに?吉野」



吉野は俺の目を真っ直ぐに見つめる。



「えっと……あ、今日これから、みんなでどっか行かない?」



「ごめん。俺、予定あるから」



吉野の手を解いて行こうとすると、彼女はもう一度俺の腕を掴んだ。



「ん……?」



彼女は目を伏せて黙り込む。俺の腕を強く掴んだまま離そうとしない。



「吉野?」



「橘くん……あのさ……」



「なに?」



「……ううん、やっぱり何でもない」



そう言って吉野は、パッと俺の手を離して笑顔を見せた。



「じゃ俺行くから」



「うん……」



俺は吉野をその場に残して廊下を走っていく。



後ろから彼女の視線を感じていたけど、俺は振り返らなかった。



いまの俺は、咲下に会いにいくことで頭の中がいっぱいだった。