「くぼっちには、前にも言ったと思うけど……俺、咲下のケータイ番号もどこに住んでるかも、何も知らない……」
この半年の間。
元気にしてるか気になっても。
連絡したくても、どうにも連絡を取りようがなかった。
いまさら後悔しても遅いけど、せめて咲下のケータイ番号、聞いとけばよかった。
「前に橘がそう言ってたからさ、咲下のケータイ番号知ってるやついないかなーって思って、最近ずっと2年の時のクラスのやつらに聞いて回ってたんだけどさ」
「マジ……?くぼっち……なんていいヤツ……」
「だろ?俺の胸に飛び込んで泣いてもいいぞ?」
「いや、泣かねぇけど」
「泣かないんかいっ」
くぼっちは左右に大きく広げた手を、元に戻す。
「んで、どうだった?」
「全員に聞いたけどさ。やっぱり咲下は誰にも番号教えてなかったよ」
「そっか……。でもみんなに聞き回ってくれてホントにさんきゅ……」
くぼっちが俺に残れって言ったのは、本当は日直の仕事を手伝わせるためじゃなくて、この話をするつもりだったのかな。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)