「おまえの心の傷は……咲下が癒してくれたんだな?」
くぼっちを見つめて、寝っ転がったままの俺はうなずく。
「そうだろうな。傷が癒えなきゃ、きっと人には優しくできねぇもん。でもおまえは元々、優しい人間だったんだろうな」
そう言ってくぼっちは、微笑んだ。
「橘……」
「ん……?」
「中学のとき、おまえのこと助けてやれなくて本当ごめんな……」
「はぁ?何言ってんだよ?俺がくぼっちと出逢ったのって高校じゃん」
「そぉだけどさぁ……」
「何言い出すかと思えば……」
ホント、いいヤツだよ……くぼっちは。
「あの日、おまえが咲下に出逢わなかったら、おまえいま、どうなってたかわかんねぇじゃんかぁ」
「うん、そうだと思う。つーか泣くなよ……くぼっち~」
「だってさぁ……ぐすっ……おまえにそんな過去があったなんてさぁ……」
くぼっちは腕で目元をゴシゴシとこする。
「おまえにとって咲下がぁ……うっ……どれだけ特別な存在なのか……よぉーくわかったよ俺……」
「泣きやめよぉ、もぉ……。俺ハンカチとか持ってねぇぞ」
「……おまえらは……赤い糸で結ばれてるよ……絶対っ」
「またクサイ台詞言いやがって……」
「だってさぁ……!」
でも、もう二度と“あの子”には逢えないと思ってた。
けど、もう一度逢えた。
それが単なる偶然でも、奇跡でも。
どっちでもかまわない。
俺はいまも、キミが好きだから。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)