「あの子には……もう二度と逢えないって思ってた」
だけど、あの日からずっと。
俺は彼女のことが、心のどこかで忘れられなかった。
彼女を想ってた……。
それが初恋だとも気づかずに……。
「だから、ホントに驚いたよ。高2の春……クラス替えで同じクラスに“咲下 凜”がいるんだもん」
でも、そんなはずない。
こんな偶然あるわけない。
もしかしたら、同姓同名の女の子かもしれない。
でも教室で咲下を目の前で見たとき、
あの日、手を差し伸べてくれた彼女だとハッキリわかった。
「高2のときに再会しておまえ、咲下とは“あの日”のときのこと話したの?」
くぼっちの言葉に俺は首を横に振った。
「話してない……でもいつか話すつもりだったよ」
彼女と再会した瞬間、俺は気づいた。
あの子を想う気持ちが……恋だったこと。
そして目の前にいる“あの子”に、いまも恋をしていること。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)