逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


橘くんのことがまたひとつ知れて、あたしはうれしい気持ちになる。



「じゃあ田舎にいた頃は、こんなふうに星がたくさん見えたでしょ」



「うん。自然が豊かな町で、景色も空気も全部綺麗で。俺、小さい頃から星を見るのが好きだった」



星空を見上げる橘くんの横顔を見つめた。



「いつ引っ越してきたの?」



「5歳のときに親が離婚してさ。俺は父親に連れられて今のところに来た」



あたしは自分の服をぎゅっと掴んで、小さな声で言った。



「……ごめん」



「え?なんで謝る?」



橘くんは首を傾げて、あたしを見た。



「人に……言いたくないことだってあるでしょ?」



「いまはもう平気。俺さ、小さい頃は兄ちゃんにベッタリだったんだよ。だから親が離婚したことより、兄ちゃんと離れたことが一番つらかった」



橘くんは笑顔を見せる。



“いまはもう平気”



きっと前はつらかったんだね。



橘くんの気持ち、あたしもわかるから。



「見て」



そう言って橘くんは、ポケットからケータイを出して、ケータイに保存している写真をあたしに見せてくれた。



「これ俺の兄ちゃん。7歳年上なんだけど」



「へぇ~橘くん、お兄さんと顔そっくりだね」



「そう?」



「うん、すっごく似てる」



橘くんが見せてくれたケータイの写真には、グレーのタキシード姿のお兄さんと純白のウェディングドレス姿のお嫁さんが写っていた。



「このまえ兄ちゃん結婚したんだ。幼なじみの華ちゃんていう子と」



ケータイの写真を見つめる橘くんの横顔を見て、あたしは微笑んだ。



「うれしそうだね、橘くん」



「兄ちゃんもいろいろあったけど、幸せになってくれてホントによかった」



親が離婚して、お兄さんと離れてしまって。



寂しかっただろうな。



だってお兄さんをこんなにも大切に思ってること。



橘くんの表情から伝わってくるから。