「親父さんのせいで、おまえの人生がめちゃめちゃになんなくて本当によかった……」
「親父を殺せなかった……だから結局、俺の日常は何も変わらない」
終わらない世界。
どこにも逃げられない。
「次の日もこの先も酒を飲めば、また俺に暴力を振るう。そんな生活が待ってるだけ。あの日の俺は絶望しかなかった」
俺はキッチンに倒れたままの親父を置いて、家から飛び出した。
苦しみ、悲しみ、憎しみ、絶望……。
俺だけが、どうしてこんな思いしなきゃなんないんだろう。
幼い頃からずっと、周りの友達はいつも幸せそうに見えた。
“なんで俺だけが”
その言葉だけが頭の中でずっと繰り返された。
「でも親父を殺そうとしたあの日、家を飛び出した俺は彼女に出逢った……」
あの日、僕らは出逢った。
キミはきっと、あの日のことを覚えていないだろう。
それでも、ふたりだけが知る秘密がある。
それはいまも、僕が持っている――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)