友達みんなの家を順番に泊まり歩いて、だけどそれもそのうち限界が来た。
学校を長く休んだら、先生や友達に事情を聞かれて、うまくごまかせなくなる。
親父に暴力を振るわれていることも発覚してしまうかもしれない。
しばらくして、俺は家に帰るしかなくなった。
「その頃の親父は、もう仕事も探さなくなってた。学校から帰ると家に親父がいて、昼間っから酒飲んでてさ」
「……おまえ……我慢して暴力に耐えてたの……?」
あの頃も俺は、親父の気持ちを理解しようと必死だったけど、
殴られたり、蹴られたり……暴力が繰り返される日々に、
俺はだんだん、まともには考えられなくなっていった。
「親父のこと……いつか殺してしまう気がした……」
逃れられない痛み……
悲しみ、恐怖。
暗くて何も見えない
そんな世界にいた。
暗い夜を歩き続けて
来るはずのない夜明けを
心のどこかで待ってた。
俺はまだ子供で
どうしたらいいかわかんなくて
何も出来なくて
“誰か……助けて……”
誰にも届かない心の叫び声も
夜の闇に消えていった。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)