逢いたい夜は、涙星に君を想うから。





「俺が中学に入った頃、親父が仕事をクビになってさ。なかなか次の仕事も決まんなくて……」



「それ……つらいな……」



そう言って、くぼっちは肩を落としてため息をつく。



「それまで酒なんて飲まなかったのにさ、家で酒飲むようになって……」



「親父さん、酒グセ悪かったん?」



「んー。つーか豹変した」



あの頃、家に帰りたくなかった。



帰るのが怖かった。



「酒で酔っぱらって、俺に暴力振るうようになった」



「暴力って……マジかよ……ひでぇな……」



親父は冷たかったけど、暴力を振るわれたことは、それまで一度もなかった。



酒を飲み出した親父は、大声で怒鳴ったり、暴力を振るったり……それまでとはまるで別人のように豹変した。



今思うと暴力は、酒のせいだけではなかったと思う。



仕事が決まらないことのストレスや、先の生活の不安や焦り、俺を養わなければいけない責任。



息子の俺にしか、八つ当たり出来なかったんだと思う。



「誰かに相談したのか?」



くぼっちの言葉に、俺は首を小さく横に振る。



「遠くで暮らす母親や兄ちゃんたちには心配かけたくなくて言えなかった」



「学校には?」



「友達にも、先生にも、誰にも言えなかった……」



「暴力振るわれてケガしなかったのか?そんなんで学校行ったら、みんなケガの理由とか聞くだろーよ?」



「ケガがひどい時は学校に行かなかったし、アザや多少の傷は、不良に絡まれてケンカしたとか適当に嘘ついてた」



「バカかよ、おまえ……なんで我慢すんだよ?」



「俺なりに逃げたりもしたよ。家に帰らないで、友達ん家に泊まり歩いたりもした」



「その友達にも暴力のこと言えなかったのか?」



「うん……。だから泊まり歩くのも、そのうち限界が来てさ……」



俺だって思ってたよ。



こんな生活がいつまで続くんだろうって。



どうしていいかわかんなくて。



どこにも逃げる場所なんてなくて。



自分じゃどうしようもできなくて、つらかった……。



「自分の親に暴力振るわれてるなんて、人には簡単に言えないんだよ……」