――――――……
翌日。
教室に着くなり、陽太と目が合った。
あたしが視線を逸らすと、陽太はあたしの前にやってくる。
「凜、話あるけん、ちょっと来て」
そう言って陽太は、あたしの右腕を掴んで教室を出ていく。
「ちょっ……あたしまだカバンも置いてないのに」
「少しでええけん」
陽太はあたしを人目につかない階段の隅へと連れていった。
向かい合って立つと、陽太は掴んでいたあたしの腕をそっと離した。
「昨日はごめん」
そう言って陽太は、深く頭を下げる。
「酔っぱらってたんでしょ?それとも寝ぼけてた?」
陽太は頭を上げて、真剣な表情であたしを見つめる。
「凜、俺……」
「もういいよ。何もなかったことにするから」
あたしは微笑む。
「だから陽太も忘れていいよ」
あたしを見つめる陽太の瞳が哀しげに見えるのは、キスしたことを申し訳なく思ってるからだよね……?
「そういうのはさ、ちゃんと好きな人としなきゃダメだよ……陽太」
「凜は好きなやつおるん……?」



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)